この記事で分かること
- 文部科学省の通知に「復帰しなくていい」とは書かれていない。あるのは、「学校に登校する」という結果「のみ」を目標にしない、という考え方
- 同じ通知には、不登校の時期が持つことのある積極的な意味と、学業の遅れなどのリスクの両方が書かれている
- 「戻る」「戻らない」の2択にせず、本人の気持ちを起点に次の一歩を小さく考える、という見方がある

こんにちは。経堂でプログラミング教室をやっている鈴木です。
教室長で、不登校支援カウンセラーでもあります。医師ではないので、医療の判断はできません。
「復帰しなくていい」という言葉を見かけると、少しほっとする一方で、本当にそれでいいのかなと不安にもなりますよね。今日は、国と世田谷区の文書に何が書いてあるかを確かめて、次の一歩の考え方を整理します。
1. 国の通知に書いてあるのは「復帰しなくていい」ではない
文部科学省が2019年10月25日に、教育委員会などに宛てて出した通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」に、こんな一文があります。
「「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること」
注目したいのは「のみ」の2文字なんですよね。登校を目標にすること自体を否定しているわけではなくて、それだけを目標にしない、という書き方です。同じ通知には「主体的に社会的自立や学校復帰に向かうよう」という言い方も出てきます。なので、「国が復帰しなくていいと言っている」と受け取ると、少し言い過ぎになると思っています。
続きには、支援する側に向けてこう書かれています。「児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること」。片方だけじゃなくて、両方が並んでいるんです。

世田谷区教育委員会の保護者向けハンドブック(2024年3月)の「おわりに」にも、「不登校の出口は「登校できるようになる」ということだけではありません」という一文があります。
2. 親が迷うところ。「目標にしない」は「何もしない」なのか
「目標にしないなら、このまま何もしなくていいの?」「戻らなかったら、あとで困るんじゃないの?」。親としては、ここが引っかかりますよね。
目標にしないことと、何もしないことは別だと思っています。 通知には「社会的自立へ向けて進路の選択肢を広げる支援をすることが重要であること」とも書かれています。
「戻らないと困る」も「戻らなくても大丈夫」も、言い切れません。 文部科学省の委託で2025年2〜3月に行われたインターネット調査があります。対象は、調査会社のパネルに登録している18〜59歳のうち、小・中学校で不登校を経験したことがあると回答した18,207人。不登校を経験したことで、中学校卒業後今までに次のようなことがあったかを聞き、「おおいにあった」「ある程度あった」と答えた人の割合です。項目の一部を挙げます(2026年11月7日確認)。
- 「学業(受験、資格試験など)で苦労した」52.2%
- 「仕事(就職活動を含む)で苦労した」52.9%
- 「人との関わりに不安を感じたり、人と関わりをもつことに苦労した」70.0%
- 「成長した、視野が広がった」53.8%
- 「人に優しくなった、人の痛みが分かるようになった」67.5%
ここに挙げた項目では、苦労も、得たものも、どちらも半数を超えています。ただ、公表された概要のこの数字は、学校に戻ったかどうかで分けたものではありません。なので、どちらかの根拠にするのは難しいと思っています。
決めるのは誰か。 区のハンドブックは、子どもが動き始めようとする「回復期」について、「何よりも大事なのは、お子さんの意思や気持ちです。学校についても一緒です」と書いています。「学校に行きたい」という気持ちがあるなら、先生に伝えて一緒に考えてもらう。「学校復帰の気持ちは少なくて、別な道を見つけたいという希望がある」なら、「無理やり学校に引き戻そうとしないで、その気持ちをしっかり受け止めてあげましょう」。どちらも、本人の気持ちが起点なんですよね。
ただ、すぐ聞き出す話でもなさそうです。将来や学校のような負荷の重い話題について、同じハンドブックには「いつかは話せるときが来ますから、焦らずにいきましょう」とあります。
3. 「次の一歩」の選択肢を整理する
順番はなくて、どれが正解ということもないと思っています。世田谷区の例で書きます。ほかの地域なら、文部科学省のパンフレットは教育委員会の不登校相談担当を相談先に挙げています。

今は休む。 通知にある「休養」の時期として、どこにも行かずに家で過ごす、という選び方です。
親だけ先に話す。 世田谷区の不登校支援窓口(電話 03-6453-1523)では、教育相談員やスクールソーシャルワーカーが保護者の話も聞きます。月曜から金曜(祝日・年末年始を除く)の午前9時から午後5時までです(2026年11月7日確認)。体調のことが気になるなら、小児科やかかりつけ医に話す、という選択肢もあります。
学校の中の、教室以外の場所。 世田谷区長は2026年2月の記者会見で、教室に入りにくい子どもたちのための校内の居場所「ほっとルーム」を「全区立学校91校で展開していきます」と説明しています。どう使えるかは在籍校に聞くことができます。
学校の外の居場所や学びの場。 ほっとスクールは区の教育支援センターです(ほっとスクールの記事)。区のページには「自分らしい進路の実現や学校生活への復帰をめざします」とあり、復帰も目的に入っています。今年度の見学受付を終えた施設もありますが、保護者の相談はできます(2026年11月7日確認)。フリースクールなどは、一定の要件を満たせば在籍校での出席認定や成績評価の対象になります。自宅での学習の場合は「出席扱い」の記事に整理しました。
学校を選び直す。 学びの多様化学校は、通常の学校より授業時間数が少ないなど、柔軟に学ぶことができる学校です。世田谷区には北沢学園中学校と世田谷中学校分教室「ねいろ」があり、どちらも中学校です。募集には期間があり、受け入れ可能人数を超えると抽選です。
今の学校に戻る。 本人が望むなら、もちろんこれも選択肢のひとつです。
区のハンドブックは回復期について、「二歩進んでは一歩下がるくらいのスモールステップで進むことがポイントです」と書いています。次の一歩は小さくていい、という考え方として読めると思います。
まとめ
- 通知にあるのは「復帰しなくていい」ではなく、「学校に登校する」という結果「のみ」を目標にしない、という考え方
- 休む時期が持つことのある積極的な意味と、学業や進路のリスクは、通知に両方書かれている
- 次の一歩は、本人の気持ちを起点に小さく考える、という見方がある
「復帰を目標にしない」は、学校を否定することではないと思っています。学校に戻る道も別の道も残したまま、今いちばん動きやすい一歩を探す。この記事がその材料になればうれしいです。
著者:鈴木岳史
iTeen経堂駅前校 教室長/不登校支援カウンセラー
参考・出典
- 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日(2026年11月7日確認)
- 文部科学省パンフレット「「教育機会確保法」って何?」(2026年11月7日確認)
- 文部科学省「不登校経験者等を対象とする調査」報告書(概要)調査は令和7年2月〜3月(2026年11月7日確認)
- 世田谷区教育委員会「不登校・登校渋り 保護者のためのハンドブック」令和6年3月(2026年11月7日確認)
- 世田谷区「不登校支援窓口」のページ最終更新日 2025年9月19日(2026年11月7日確認。受付時間は変わることがあります)
- 世田谷区「区長記者会見」令和8年2月6日(2026年11月7日確認)
- 世田谷区「ほっとスクール(教育支援センター)」のページ最終更新日 2026年10月1日(2026年11月7日確認)
- 世田谷区「学びの多様化学校(不登校特例校)」のページ最終更新日 2026年10月23日(2026年11月7日確認)


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